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シネマ大吟醸
によって 太田 和彦
シネマ大吟醸の詳細
本のタイトル : シネマ大吟醸
作者 : 太田 和彦
ISBN-10 : 4048833677
発売日 : 1994/12
カテゴリ : 本
ファイル名 : シネマ大吟醸.pdf
以下は シネマ大吟醸 の最も正直なレビューです。 この本を読んだり購入したりする場合は、これを検討してください。
この本は、戦前日本映画の最高、最良の案内書であると思う、一つの点を除いて。まずは、著者は文章が非常にうまい。'ア紹介が一作品につき、約25〜30行でピタリとまとまっている。過不足なし。'イ短く書くべきことを短く書く、重要部分はちょっと長めに書く。緩急のリズムが心地よい。'ウ修辞、比喩がたいへんうまい。たとえば、著者によれば、「家庭日記」はベルイマンの初期作品を思わせるモダンな心理劇なのである。'エ昭和初期の明朗時代劇が大好きという著者の好みを反映して、随所にユーモアが挟まれている。'オ情緒あふれる文章なのに、大変論理的である。かつ、その論理が心地よい。次に、著者は、古い日本映画の本質を見抜いている。すなわち、小津安二郎は、実はドライなモダニストであって、真の日本的なものは、複雑な構図なく撮られた清水宏監督作品の方にあり、その本質は、はみ出し者志向、孤独な自由を好むセンチメンタリズムなのである。言われてみると、その通りである。そして、一番魅力的なのは、映画と記憶と時間に関する、著者の考察と論理であろう、著者によれば、戦前映画に写る、失われた風景は、自分の中にある「知らない記憶」であり、その「未知の記憶」に出会うのが、古い映画を見るスリルなのである。そして、劇映画には、作家の感性が入っているから、映画こそがその時代の最も美しい記録になっており、その美しさは風俗映画にこそ、よく残されているのである。そして、時間がすべてを浄化するから、映画は作られた当時よりも、時を得てよくなるものである・・・・泣かせるではないか!最後に、残念な一つの点について書くと、この本の原書には一作品に一枚ずつ、その映画のスチール写真が載せられていた。この写真は、まさに著者のいう「未知の記憶」そのもので、著者の名文と共鳴して、魅力あふれる本を作っていたのだが、文庫本では、これらのスチール写真がすべて削除されてしまった。著作権の問題等があるのかもしれないが、ため息の出るほど残念なことである。
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